- エマ・キム
TOKYO2020のPRビデオに、こんな英語?
ルア・ランゲージサービス代表・翻訳担当のエマです。
一昨日、リオのオリンピックがいよいよ終わり、閉会式にてTOKYO2020に向けて五輪聖火が日本へ渡されましたね。これでTOKYO2020への期待が一気に高まりますね~
でも何よりも、皆が見ていたのは、きっとスーパーマリオに変身してリオに現れた安倍総理大事だったでしょう。
私も後から閉会式に公開されたTOKYO2020のプロモーションビデオを見て世界の皆とともに「カッコいい!日本ってやっぱりいいね!私も東京2020行きたい!」と、感動しました。
まさにオリンピックに相応しく、日本の魅力に満ちる、TOKYO2020への期待をグッとあげてくれる素晴らしいプロモーションビデオだったと思います。
でも、どうしても気になってしまうのがこの場面で使われていた英語。

おそらく車でリオに向かっている途中で間に合わないと気付いた安倍総理のセリフですね。
「リオに間に合わない~」という意味ですが、
皆さんは、このセリフを見てどう思われますか?なんとなく不自然に感じる人はいませんか?
ここのセリフは、実は文法的には完璧で、文章として全く問題ありません。
ただし、「ここで、それを?」と、私は疑問に感じてしまいます。
なぜかというと、ネイティブや英語に使い慣れている人なら、このような場面でこの言葉を言うことはないからです。
そもそも、will は、今後何かをすると「決めたとき」に使う言葉であって、絶対的なニュアンスがあります。
例えば、"I will do the laundry tomorrow" (洗濯物は明日するよ)/ "I'll call you this afternoon"(午後に電話するね) / "Make sure you post this tomorrow!" "I will!"(これ、明日郵便に出すの忘れないでね うん、出すよ!)などといった場面に使う言葉です。宣言的な、「決心した」的なニュアンスが、なんとなくあります。
そのため、will には通常、意図が含まれていて、自分がそうする!そうしよう!と決めたときに使うものであって、「前に決めたこと」や「自分の意図と関係なく決まったこと」、「自分がコントルールできないこと」については使わないと思います。
つまり、ここで「will」が使われたことで、ネイティブの耳には安倍総理が「間に合わないから、リオに行かないことにした」と言っているように聞こえてしまう訳です。そうすると、マリオとして現れるときには「え?なんでいるの?」となるのです。最終的な判断や何かの宣言に聞こえてしまうため、「じゃ、あなたは来ないのね」と思うからです。
さて、ここで、どんな言葉を使えばさらに自然な表現にできたのでしょうか?
本来、安倍総理が、RIOに行こうとしているのに間に合いそうにないと気づいた時の
セリフは、"I'm not going to make to Rio in time!" になります。
この文法は、自分の意図とは関係なく言うときや、既に決めた・決まった予定や状況について話すときに使うものです。
例えば、"I'm going to be late because of traffic"(渋滞のため遅刻します) / "I'm going to start University next year"(来年大学に入学するよ) / "I'm going overseas this weekend"(今週末、海外に旅行してきます)
これら全ては今決めたのではなく、少し前に決めて時間が経っているのか、自分と意図とは関係なく、自然とそうなったことなんですね。
見て分かるとおり、日本語ではどちらも「する/します」になるため、きっとこの感覚がすぐにはピンとこないかも知れませんが、ネイティブにはニュアンスの違いが伝わってしまうのです。
ここまで言って、「じゃ、なぜそんな小さいところで引っかかるの?」と思うのかも知れませんが、やはり「品質」と「評判」に影響を及ぼしてしまうからだと思います。
このセリフが出るまでこの動画は、非常にクオリティーが高く、日本の魅力と良さ、TOKYO2020のスピリットをしっかり伝えてくれますので、これを見た人は日本がスポーツだけではなく、デザインやテクノロジーにおいても先端で、魅力あふれる国だと思うはずです。
しかし、こんなに魅力とデザイン性のあるPRビデオなのに、どうしてもまだ残ってしまっているのが日本の「Engrish」(先週若尾がブログで取り上げた「Japanglish」)です。そしてこのEngrishも、実は動画に出現するキティちゃんやドラえもんと変わらないくらい世界的に知られているのです。というのは、日本の英語が「かわいい」、「おもしろい」、「おかしい」という現実も、世界的に有名な訳です。
これは、面白いEngrishの書いてあるTシャツを探しに日本にくる外国人観光客がいて、Engrishのオンラインコレクションがネットサーフィンをしている暇なみなさんのエンタテイメントになっているくらいです。(リンク)
そこで、このような英語の間違いや、ちょっとした不自然な使い方を見て、嫌に思ったり不快に感じたりする人はきっといないと思います。その一方、日本に来る外国人はこのEngrishを非常に楽しんでいるのです。
しかし、私がどうしても気になるのは、世界に伝わっている、日本のイメージです。
日本は世界から「英語がおかしいから面白い」国として見られ続きたいのでしょうか。それとも、その本当の魅力とユニークさをしっかり発信しつつ、グローバル社会や経済において、しっかりとコミュニケーションやリーダーシップが取れる国として認められたいのでしょうか。
もしそう願うのであれば、日本の「グローバルイメージ」をあげていくためには、どこかで、このEngrishをどうにか直す必要があると思います。
ま、私の個人的な思いかも知れませんが、日本の政府や企業には、ぜひ英語力をグッとあげたときの効果を実感して、「かわいい」英語ではなく、自然で表現豊かな英語で日本が本気であることを世界にバンバン発信していって欲しいと私は思っております。そしてそのためにRUAHでお手伝いできることは、喜んでさせて頂きたいと思っています^^)d
みなさんはどう思いますか?世界の目に、日本がどんな国であって欲しいと思いますか?